- 執筆者弁護士 山本哲也

はじめに
「機械に手を巻き込まれ、指を失ってしまった」
「清掃中に、止めていたはずの羽根が突然動き出した」
食品工場や化学製品の製造現場などで使われる撹拌機は、材料を混ぜ合わせるために強い力で回転する機械です。それだけに、ひとたび巻き込まれると重大なけがにつながります。
本コラムでは、撹拌機で起こりうる労働災害の例や、会社が負う安全配慮義務、被災された場合の対応について、群馬県高崎市・前橋市に拠点を置く山本総合法律事務所の弁護士が解説します。
撹拌機で起こりうる労働災害の一例

撹拌機は、回転する羽根やスクリューで、液体や粉体、粘り気のある原料を混ぜる機械です。人の力では抵抗できない強い力で回転するうえ、羽根と容器の壁との間に体が挟まれやすい構造になっています。
回転部への巻き込まれ・挟まれ
稼働中の羽根に手や衣類が触れ、そのまま引き込まれる事故です。粘度の高い原料を扱う機械では自力で抜け出すことが難しく、腕や指の骨折、切断に至ることもあります。
【参考】挟まれ事故・巻き込まれ事故
点検・清掃中の誤作動
機械を止めて内部を清掃している最中に、他の作業員が清掃中と気づかずスイッチを入れてしまう事故です。また、主電源を切っていても、残っている圧力や惰性で羽根が動くことがあります。
原料投入時の転落・接触
大型の撹拌槽では、上部の投入口から原料を入れる際に、バランスを崩して槽内に落ちたり、投入口付近で手を巻き込まれたりする事故が起こります。
生産効率を優先するあまり、安全装置を無効にしたり、防護カバーを外したまま使用したりしている現場では、こうした事故が起こりやすくなります。
【参考】転落事故
会社がとるべき安全配慮義務

会社は、労働者が安全に働けるよう配慮する義務を負っています(労働契約法5条)。これを安全配慮義務といいます。
撹拌機については、労働安全衛生規則でも具体的な措置が定められています。
- 混合機や粉砕機の内部に転落するおそれがあるときは、蓋や囲い、柵などを設ける(142条1項)
- 開口部から可動部分に接触するおそれがあるときは、蓋や囲いなどを設ける(142条2項)
- 掃除、給油、検査、修理などを行うときは、機械の運転を止める(107条)
食品加工用の粉砕機や混合機については、130条の5以下にも同様の定めがあります。
これらの措置がとられていなかった、作業手順が定められていなかった、安全教育が行われていなかったといった事情があれば、会社の安全配慮義務違反が問題になります。
また、他の作業員のミスで事故が起きた場合でも、会社は使用者責任(民法715条)を問われることがあります。
【参考】労災における安全配慮義務違反とは?弁護士が事例を交えて解説
重大な怪我をしてしまった場合にとるべき対応

治療を最優先する
まずは治療に専念してください。後の手続きのためにも、けがの状態や症状は、医師に正確に伝えることが大切です。
【参考】労災事故にあい、治療中の方へ
労災保険の申請をする
労災保険からは、治療費にあたる療養補償給付や、休業補償給付などを受けられます。会社が手続きに協力してくれない場合でも、労働者本人が申請できます。
事故の状況を記録に残す
時間が経つと、機械の改修や部署の変更などで、当時の状況がわからなくなることがあります。次のような資料を、できる範囲で残しておきましょう。
- 事故が起きた機械や現場の写真
- 安全装置やカバーの有無がわかる記録
- 作業手順書、安全教育の記録
- 目撃した同僚の証言や連絡先
- 労働基準監督署の調査に関する書面
示談書に安易に署名しない
会社から示談を持ちかけられることがあります。一度署名すると、原則としてやり直しはできません。署名する前に、内容をよくご確認ください。
後遺障害が残ると言われたら

治療を続けても症状が改善しない状態を「症状固定」といいます。この時点で残った症状は、後遺障害として等級の認定を受けられる可能性があります。
撹拌機の事故では、次のような後遺障害が問題になります。
- 手指の欠損や機能障害
- 腕の機能障害、関節の可動域制限
- 傷あとが残る醜状障害
後遺障害の等級は、障害補償給付の額に直結します。また、会社への損害賠償を請求する際の、慰謝料や逸失利益の算定にも影響します。
認定は、提出された診断書などの資料をもとに行われます。そのため、残っている症状が診断書に正確に記載されているかどうかが重要です。認定結果に納得できない場合は、審査請求という不服申立ての手続きもあります。
【参考】仕事中に肩を怪我した場合の等級・後遺障害は?弁護士が解説
会社への損害賠償請求をしたい方へ

労災保険の給付は、あくまで最低限の補償です。精神的な苦痛に対する慰謝料は含まれていません。
会社に安全配慮義務違反などが認められる場合には、労災保険とは別に、次のような損害の賠償を請求できます。
- 入通院慰謝料、後遺障害慰謝料
- 逸失利益(将来得られるはずだった収入の減少分)
- 休業損害のうち、労災保険で補われない部分
重い後遺障害が残った場合、請求できる金額が労災保険の給付を大きく上回ることもあります。
なお、会社側から「作業員本人の不注意だった」として、過失相殺を主張されることがあります。安全装置が無効にされていた、危険な作業が黙認されていたといった事情があれば、それに反論していくことになります。
損害賠償を請求する権利には時効があります。安全配慮義務違反を理由とする請求の場合、損害と加害者を知ったときから5年で時効にかかります。早めに準備を進めることが大切です。
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このようなお悩みを、お一人で抱え込む必要はありません。方針が決まっていない段階でも構いません。
山本総合法律事務所は高崎市と前橋市の2拠点で、8名の弁護士がチーム体制で労災問題に対応しています。労災保険の申請から後遺障害の等級認定、会社への損害賠償請求まで、一貫してサポートいたします。労災に関するご相談は何度でも無料で、交渉段階では着手金もいただいておりません。
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