労働災害と後遺障害等級認定

治療を受ける男性

仕事中に怪我をしてしまい治療をしたものの、身体に一定の障害が残ってしまった場合に、労働基準監督署が審査を行い、基準に該当すれば「後遺障害等級」を認定します。

後遺障害等級が認定されれば、障害補償給付(業務災害の場合)・障害給付(通勤災害の場合)が支給されますので、症状が残っている場合には後遺障害等級の申請を行うべきです。

労働災害における後遺障害について、群馬県高崎市の弁護士が解説します。

1 後遺障害とは

手のレントゲン

労働災害の被害に遭って怪我を負ってしまった場合、多くの場合は療養給付(業務災害の場合)や療養補償給付(通勤災害の場合)を受けて、病院にて治療を受けることになります。

治療を受けることによって、症状は快方に向かうことが多く、完治する場合もあります。

ところが、中には治療を受けても完治せず、一定の症状が残ってしまう場合もあります。このように、治療を続けても治療の効果が期待できない状態のことを「治癒」または「症状固定」と呼びます。

治癒または症状固定後には、労働基準監督署に対して後遺障害の申請を行い、後遺障害として認定がされると、等級に応じた障害補償給付や特別支給金を受け取ることができます。

2 後遺障害等級の申請方法

診断書(労災)様式第10号

後遺障害を申請するためには、治癒または症状固定後に、主治医に後遺障害についての「診断書」を書いてもらう必要があります。

この診断書には、治癒または症状固定の時点でどのような症状が残っているのかについて、具体的に記載してもらわなければなりません。

どのような記載が必要かについては症状によって異なりますので、診断書を作成する前に一度弁護士にご相談いただいた方がよいでしょう。

診断書の作成後には、その他の申請書類を揃えて、管轄の労働基準監督署に提出します。

申請書類の中には、会社が記入しなければならないものもありますので、会社の協力も必要になります。もっとも、会社が作成に協力してくれない場合であっても、申請自体はすることができます。

【参考】厚生労働省|障害(補償)等給付の請求手続
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/040325-8.html

3 後遺障害の内容

労災の資料

労災補償の後遺障害の等級は、部位や程度によって1~14級までの等級と140種類、35系列の後遺障害に細かく分類されています。

1級から7級については障害(補償)年金が、8級から14級については障害(補償)一時金が支給されます。

下記に障害の等級表を掲載しますので、ご参考になさってください。

なお、等級が認定される基準はそれぞれ異なっており、適切な等級認定を獲得するためには、幅広い医学的知見や認定実務への深い理解等の専門的知識が必要不可欠です。

労災の後遺障害認定でお困りの際には、一度お近くの弁護士に相談されることをおすすめします。

詳しくはこちら>> 適切な後遺障害認定を認定してもらうために

4 障害等級表

第1級

当該障害の存する期間1年につき給付基礎日額の313日分給付(年金)。

・両目が失明したもの

・そしゃく及び言語の機能を廃したもの

・神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの

・胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの

・両上肢をひじ関節以上で失ったもの

・両上肢の用を全廃したもの

・両下肢をひざ関節以上で失ったもの

・両下肢の用を全廃したもの

第2級

当該障害の存する期間1年につき給付基礎日額の277日分給付(年金)。

・1眼が失明し、他眼の視力が0.02以下になったもの

・両眼の視力が0.02以下になったもの

・神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの

・胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの

・両上肢を手関節以上で失ったもの

・ 両下肢を足関節以上で失ったもの

第3級

当該障害の存する期間1年につき給付基礎日額の245日分給付(年金)。

・1眼が失明し、他眼の視力が0.06以下になったもの

・ そしゃく又は言語の機能を廃したもの

・神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの

・ 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの

・ 両手の手指の全部を失ったもの

第4級

当該障害の存する期間1年につき給付基礎日額の213日分給付(年金)。

・ 両眼の視力が0.06以下になったもの

・そしゃく及び言語の機能に著しい障害を残すもの

・両耳の聴力を全く失ったもの

・1上肢をひじ関節以上で失ったもの

・1下肢をひざ関節以上で失ったもの

・両手の手指の全部の用を廃したもの

・両足をリスフラン関節以上で失ったもの

第5級

当該障害の存する期間1年につき給付基礎日額の184日分給付(年金)。

・1眼が失明し、他眼の視力が0.1以下になったもの

・神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの

・胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの

・1上肢を手関節以上で失ったもの

・1下肢を足関節以上で失ったもの

・1上肢の用を全廃したもの

・1下肢の用を全廃したもの

・両足の足指の全部を失ったもの

第6級

当該障害の存する期間1年につき給付基礎日額の156日分給付(年金)。

・両眼の視力が0.1以下になったもの

・そしゃく又は言語の機能に著しい障害を残すもの

・両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの

・1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの

・せき柱に著しい変形又は運動障害を残すもの

・1上肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの

・1下肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの

・1手の5の手指又は母指を含み4の手指を失ったもの

第7級

当該障害の存する期間一年につき給付基礎日額の131日分給付(年金)。

・1眼が失明し、他眼の視力が0.6以下になったもの

・両耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの

・1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの

・神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの

・胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの

・1手の母指を含み3の手指又は母指以外の4の手指を失ったもの

・1手の5の手指又は母指を含み4の手指の用を廃したもの

・1足をリスフラン関節以上で失ったもの

・1上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの

・1下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの

・両足の足指の全部の用を廃したもの

・外貌に著しい醜状を残すもの

・両側のこう丸を失ったもの

第8級

当該障害の存する期間一年につき給付基礎日額の503日分給付(一時金)。

・1眼が失明し、又は1眼の視力が0.02以下になったもの

・せき柱に運動障害を残すもの

・1手の母指を含み2の手指又は母指以外の3の手指を失ったもの

・1手の母指を含み3の手指又は母指以外の4の手指の用を廃したもの

・1下肢を5センチメートル以上短縮したもの

・1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの

・1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの

・1上肢に偽関節を残すもの

・1下肢に偽関節を残すもの

・1足の足指の全部を失ったもの

第9級

当該障害の存する期間一年につき給付基礎日額の391日分給付(一時金)。

・両眼の視力が0.6以下になったもの

・1眼の視力が0.06以下になったもの

・両眼に半盲症、視野狭さく又は視野変状を残すもの

・両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの

・鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの

・そしゃく及び言語の機能に障害を残すもの

・両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの

・1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの

・1耳の聴力を全く失ったもの

・神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの

・胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの

・1手の母指又は母指以外の2の手指を失ったもの

・1手の母指を含み2の手指の用を廃したもの

・1足の第1の足指を含み2以上の足指を失ったもの

・1足の足指の全部の用を廃したもの

・外貌に相当程度の醜状を残すもの

・生殖器に著しい障害を残すもの

第10級

当該障害の存する期間一年につき給付基礎日額の302日分給付(一時金)。

・1眼の視力が0.1以下になったもの

・正面視で複視を残すもの

・そしゃく又は言語の機能に障害を残すもの

・14歯以上に対し歯科補てつを加えたもの

・両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの

・1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの

・1手の母指又は母指以外の2の手指の用を廃したもの

・1下肢を3センチメートル以上短縮したもの

・1足の第1の足指又は他の4の足指を失ったもの

・1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの

・1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの

第11級

当該障害の存する期間一年につき給付基礎日額の223日分給付(一時金)。

・両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの

・両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの

・1眼のまぶたに著しい欠損を残すもの

・10歯以上に対し歯科補てつを加えたもの

・両耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの

・1耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの

・せき柱に変形を残すもの

・1手の示指、中指又は環指を失ったもの

・1足の第1の足指を含み2以上の足指の用を廃したもの

・胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの

第12級

給付基礎日額の156日分給付(一時金)。

・1眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの

・1眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの

・7歯以上に対し歯科補てつを加えたもの

・1耳の耳かくの大部分を欠損したもの

・鎖骨、胸骨、ろく骨、肩こう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの

・1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの

・1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの

・長管骨に変形を残すもの

・1手の小指を失ったもの

・1手の示指、中指又は環指の用を廃したもの

・1足の第2の足指を失ったもの、第2の足指を含み2の足指を失ったもの又は第3の足指以下の3の足指を失ったもの

・1足の第1の足指又は他の4の足指の用を廃したもの

・局部にがん固な神経症状を残すもの

・外貌に醜状を残すもの

第13級

給付基礎日額の101日分給付(一時金)。

・1眼の視力が0.6以下になったもの

・1眼に半盲症、視野狭さく又は視野変状を残すもの

・正面視以外で複視を残すもの

・両眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの

・5歯以上に対し歯科補てつを加えたもの

・胸腹部臓器の機能に障害を残すもの

・1手の小指の用を廃したもの

・1手の母指の指骨の一部を失ったもの

・1下肢を1センチメートル以上短縮したもの

・1足の第3の足指以下の1又は2の足指を失ったもの

・1足の第2の足指の用を廃したもの、第2の足指を含み2の足指の用を廃したもの又は第3の足指以下の3の足指の用を廃したもの

第14級

給付基礎日額の56日分給付(一時金)。

・1眼のまぶたの一部に欠損を残し、又はまつげはげを残すもの

・ 3歯以上に対し歯科補てつを加えたもの

・1耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの

・上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの

・下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの

・1手の母指以外の手指の指骨の一部を失ったもの

・1手の母指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの

・1足の第3の足指以下の1又は2の足指の用を廃したもの

・局部に神経症状を残すもの

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