後遺障害1級とは?主な症状や認定基準、慰謝料相場について弁護士が解説

「少し持ち直したかと思えば、また悪くなる。この先どうなるのか分からない」 「会社の説明が二転三転していて、何を信じればよいのか分からない」

障害等級1級が問題となるような労災は、報道で取り上げられるほど重大な事故であることが少なくありません。ご家族は、搬送先の病院に通いながら医師の説明を受け、同時に会社や労働基準監督署とのやり取りにも向き合うことになります。

「電話が鳴るたびに身構えてしまう」 「夜になっても気持ちが休まらない」

悪い知らせが届くのではないかという不安を抱えたまま、一日一日を過ごしておられる方も多いはずです。容態が時々刻々と変わるこの時期に、補償のことまで考える余裕はないというのが実情だと思います。

それでも、時間の経過とともに選べる手段が狭まっていく手続きがあります。今すぐ動かれる必要は必ずしもありません。ただ、この先どのような補償があり、どの場面で判断を求められるのかを知っておくことは、ご本人の治療とご家族の生活を守る備えになります。

本コラムでは、労災における障害等級1級の内容と認定の流れ、受けられる補償、そして慰謝料の考え方について、群馬県高崎市・前橋市に拠点を置く山本総合法律事務所の弁護士が解説します。

労災の障害等級1級とはどのような状態か

仕事中や通勤中のけがや病気について、治療を続けても回復が見込めない状態になることを症状固定といいます。この時点で残った障害が後遺障害であり、その程度に応じて1級から14級までの等級が定められています。

1級は、そのうち最も重い等級です。労働能力を完全に失った状態と評価され、年金の形で補償が続く点に特徴があります。

【参考】労災事故の対処方法① 事故直後・治療中の方がすべきこと

障害等級1級に該当する主な症状

労災の障害等級表では、第1級に次の8つが定められています。

  1. 両目が失明したもの
  2. そしゃくおよび言語の機能を廃したもの
  3. 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
  4. 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
  5. 両上肢をひじ関節以上で失ったもの
  6. 両上肢の用を全廃したもの
  7. 両下肢をひざ関節以上で失ったもの
  8. 両下肢の用を全廃したもの

実務で多いのは、3号と4号にあたる、常に介護を要する状態です。高所からの転落や機械への巻き込まれによる重度の頭部外傷、脊髄の損傷などが原因となります。

意識が戻らない状態が続く場合のほか、意識はあっても、自分で食事や排せつができず、記憶や判断の力が失われているような場合が含まれます。

【参考】労災事故にあい、治療中の方へ

認定の基準と認定までの流れ

等級は、症状固定の時点における状態をもとに判断されます。流れは次のとおりです。

1.症状固定の診断を受ける

主治医が、これ以上の改善が見込めないと判断した時点が症状固定です。

2.診断書などの書類を準備する

障害の状態を示す診断書のほか、画像や検査の結果、介護の実情が分かる資料をそろえます。

3.労働基準監督署へ請求する

障害補償給付の支給請求書を提出します。

4.調査と決定

監督署による調査が行われ、必要に応じて面談や医師への照会が行われたうえで、等級が決定されます。

とくに、常に介護を要する状態かどうかが問われる事案では、画像や検査の結果だけでは判断がつきにくく、日常生活の実情をどこまで伝えられるかが結論を左右します。一日のうちどの場面でどのような介助が必要なのか、具体的に記録を残しておくことが大切です。

【参考】後遺障害の認定をお考えの方へ

1級の認定を受けた場合の補償

労災保険からは、主に次の給付を受けられます。

  • 障害補償年金として、給付基礎日額の313日分が毎年支給されます
  • 障害特別支給金として、342万円が一時金で支給されます
  • 算定基礎日額に応じた障害特別年金が支給されます
  • 常に介護を受けている場合には、介護補償給付が支給されます

介護補償給付には月ごとの上限が定められており、実際にかかる費用のすべてが補われるとは限りません。

慰謝料は労災保険からは支払われません

ここが、見落とされやすい点です。労災保険の給付に、慰謝料は含まれていません。

精神的な苦痛に対する慰謝料を求めるには、会社に対して損害賠償を請求する必要があります。安全な設備や作業の体制を整える義務を会社が怠っていた場合、その責任を問うことができます。

裁判で用いられる基準では、後遺障害1級の慰謝料はおよそ2,800万円とされています。これに加えて、次のものを請求できる場合があります。

  • 働けなくなったことによる逸失利益
  • 将来にわたって必要となる介護の費用
  • 介護のために必要となる自宅の改修や車の改造にかかる費用
  • ご家族自身の精神的な苦痛に対する慰謝料

一方で、会社の責任を問うには、どのような危険があり、どの対策が取られていなかったのかを示す必要があります。受け取った年金の一部が賠償額から差し引かれる点もあわせて考える必要があります。

【参考】労働災害の慰謝料請求

認定や請求で気をつけたいこと

決定に納得できない場合

認定された等級に疑問がある場合、審査請求によって争うことができます。期間に制限があるため、決定の通知を受け取ったら早めにご確認ください。

会社から示談を提案された場合

早い段階でまとまった金額を提示されることがあります。将来の介護費用まで含まれているかどうかを確認しないまま署名すると、後から追加の請求ができなくなるおそれがあります。

ご本人が手続きを進められない場合

1級の事案では、ご本人が書類の準備や交渉を行うことは困難です。ご家族からのご相談も承っておりますので、ご本人に代わってお話をお聞かせください。

【参考】労働災害と後遺障害等級認定

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