- 執筆者弁護士 山本哲也
この事例のポイント
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 事故の内容 | 作業中、右手人差し指がピースとフックの間に挟まれた事故 |
| 後遺症 | 右手人差し指の末節骨全部と中節骨の一部を喪失 |
| 認定等級 | 後遺障害12級9号 |
| 会社側の対応 | 安全配慮義務違反を否定 |
| 解決方法 | 交渉後、訴訟を提起し、和解により解決 |
| 最終的な補償額 | 労災給付を含め総額1,419万2,697円 |
ご依頼者様データ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ご依頼者様 | 40代男性 |
| 職業 | 派遣社員 |
| 業務内容 | トンネルセグメントの製造業務 |
| 傷病名 | 右示指切断後、右示指断端神経腫 |
| 後遺症の内容 | 右手示指について、末節骨の全部と中節骨の一部を喪失 |
| 後遺障害等級 | 第12級9号 |
災害の状況

ご依頼者様は、トンネルセグメントの製造業務に従事していました。
具体的には、重さ約1.5トンのセグメントピースをクレーンで反転させながら、溶接作業を行う業務です。
事故当日、ご依頼者様は、自分の作業を終えた後、まだ作業を終えていない同僚を手伝うため、クレーンの玉掛作業を行っていました。
その作業中、セグメントピースがずれ落ち、ピースとフックの間に右手人差し指が挟まれてしまいました。
この事故により、ご依頼者様は右手人差し指の一部を失い、右示指切断後・右示指断端神経腫と診断されました。
その後、労災において後遺障害12級9号が認定されました。
相談・依頼のきっかけ
ご依頼者様のご家族から、当事務所にご相談がありました。
ご相談内容は、労災で後遺障害が認定されたものの、けがによって日常生活に支障が生じており、収入面にも影響が出ているため、勤務先に対して損害賠償請求をしたいというものでした。
労災事故では、労災保険から給付を受けられる場合があります。
しかし、会社の安全管理体制や作業環境に問題があった場合には、労災保険とは別に、会社へ損害賠償請求を行うことができる可能性があります。
そこで当事務所では、労災保険からの給付だけで終わらせるのではなく、会社側に対して損害賠償請求を行う方針でご依頼をお受けしました。
解決方法
- 相手方企業との示談交渉
- 訴訟
解決金額
| 労災支給額 | 651万7,240円 |
| 会社からの賠償額 | 767万5,457円 |
| 総額 | 1,419万2,697円 |
解決のポイント

受任後に労働局より、資料一式を取り寄せ、同資料を元に、相手方企業に請求可能な金額を算定しました。算定の結果、相手方企業に一定額の賠償額を請求することが可能でしたので、内容証明郵便を送付し、交渉を開始しました。
交渉段階においては、相手方企業は、「ピース作業の資格を有していない者が同僚の作業をすることはそもそも予見可能性がなく、安全配慮義務違反にならない。また、仮に予見可能性があったとしても、職場環境を整えていたのであるから、義務に違反したことにならない。」との主張に終始し、交渉では埒があかなかったため、訴訟を提起することにしました。
訴訟では、交渉時に相手方企業の主張内容を把握していたため、依頼者の主張を基礎づける証拠の収集を依頼し、同証拠に基づいて、相手方企業の主張内容がいかに信用性が低いかを準備書面及び証拠によって裁判官に理解を求めました。
依頼者が主張する業務実態が真実であることを粘り強く訴え続けたことにより、当方の主張内容を全面的に肯定した裁判所の和解案が提示され、約2年半を要しましたが、和解によって無事解決となりました。
本件では、依頼者が外国籍の方であり、相手方企業が外国人労働者の労務環境を十分に整えていなかったことが事故の原因となっておりました。労働災害は、具体的な事故状況等によって相手方企業の責任の有無が決せられることが多いです。労働災害に遭ってしまい、企業に損害賠償を請求するか迷われている方は一度弁護士に相談していただくと良いかと思います。
【参考】労災における安全配慮義務違反とは?会社に損害賠償請求できる?
まとめ
本件は、右手人差し指を切断し、後遺障害12級9号が認定された労災事故について、会社に損害賠償請求を行った事例です。
会社側は当初、安全配慮義務違反を否定していましたが、訴訟で作業実態や事故状況を丁寧に主張した結果、会社から約767万円の賠償を受けることができました。
労災保険からの支給額と合わせると、最終的な補償額は総額1,419万2,697円となりました。
労災事故では、労災保険の給付だけで終わらせず、会社への損害賠償請求を検討することで、補償額が大きく変わることがあります。
指の切断事故、挟まれ事故、巻き込まれ事故などで後遺障害が残った方は、会社に対する損害賠償請求の可能性について、早めに弁護士へ相談することが大切です。
なぜ労災事故は弁護士に依頼すべきなのか?






