- 執筆者弁護士 山本哲也

労災保険の給付を受けるためには、給付内容に応じて様々な書類を提出することが必要です。
なかでも労災様式5号という書類は、労災給付の申請書類の中で中心的なものと言えます。
そこで今回は、労災様式5号の概要や他の様式との違い、注意点等について網羅的に解説していきます。
労災様式5号とは

労災様式5号とは、労働者が労災保険指定医療機関(労災指定病院)や労災病院を受診し、療養補償給付を申請する際に使用する書類です。
様式5号を提出することで病院や薬局での支払いが不要となります。
以下ではさらに詳しく解説します。
そもそも労災保険とは
そもそも労災保険(労働者災害補償保険)とは、労働者が業務上または通勤中の事故によって負傷・疾病・障害・死亡などの被害を被った場合に、労働者本人や遺族に給付金の支払や社会復帰促進事業を行う公的な制度です。
労災保険で受けられる給付
労災保険で受けられる給付は以下のとおりです。
療養(補償)給付:
治療費が無料になったり、一度支払った治療費が還付されます。
なお、療養補償給付は業務災害で支払われるものであり、療養給付は通勤災害で支払われるものです。補償の内容に違いはありません。
休業(補償)給付
療養のために休業し賃金が支払われないときに、休業日数などに応じて支給されます。
障害(補償)給付
所定の障害が残ったときに、障害の程度に応じて支給される年金または一時金です。
傷病(補償)年金
療養開始から1年6か月経過しても症状固定せず、傷病等級1~3級に該当するときに支払われる年金です。
介護(療養)給付
障害年金や傷病年金の受給者のうち、所定の介護を受けている人に支給される給付金です。
遺族(補償)給付
労災で死亡した場合、遺族に支給される年金方は一時金です。
葬祭料等(葬祭給付)
労災で死亡して葬儀を行う場合に、遺族に支給される一時金です。
【参考】労災保険の申請
給付の申請に様式5号が必要な場合
様式5号は、先ほども述べたとおり、療養補償給付を請求する際に提出する書類です。正式名称は、「療養補償給付及び複数事業労働者療養給付たる療養の給付請求書」といい、①業務災害である、②労災、労災保険指定医療機関、労災保険指定薬局を受診するという要件を満たすケースで使用するものです。
治療を受けている労災指定病院や薬局などの窓口に様式5号を提出すると、病院や薬局から労働基準監督署長へ提出され、無料で治療や薬の支給を受けることができます。
その他の様式との違い
労災保険の保証を受けるためには、給付の種類や災害の種類に応じや請求書を使用して申請する必要がありますが、似ている様式もあるため注意が必要です。
以下は、様式5号と間違えられやすい書類です。
- 様式6号:治療を受ける指定医療機関等を変更する際に使用します。
- 様式7号:指定医療機関等以外の病院を受診し、療養補償給付を申請する際に使用します。
- 様式8号:休業補償給付を請求する際に使用します。
特に様式5号と7号は、いずれも療養補償給付を申請する際に使用するものですが、5号は指定医療機関を受診する際に使用するもので、7号は指定医療機関以外を受診する際に使用するもので、間違いやすいため、注意が必要です。
労災様式5号の入手方法と記入例について

様式5号の入手方法について
労災申請に関する様式は、労働淳監督署で直接受け取ることができるほか、厚生労働省のウェブサイトからダウンロードして入手することができます。
【参考】主要様式ダウンロードコーナー(労災保険給付関係主要様式)厚生労働省
様式5号の記入例について
記入例は、以下に記載があるので参照してください。
給付を申請する労働者が記載すべき項目は、以下のとおりとなります。
- 労働保険番号
- 性別
- 労働者の生年月日
- 負傷又は発病年月日
- 労働者の氏名(カナ)、年齢
- 労働者の郵便番号、住所、職種
- 負傷又は発病の時刻
- 災害発生の事実を確認した者の職名、氏名
- 災害の原因及び発生状況
- 指定病院等の名称、所在地
- 傷病の部位および状態
- その他就業先の有無
以上に加え、事業主証明欄があるので、会社に依頼して記入してもらうこととなります。
書き間違えたときには、該当箇所に二重線を引き、余白に正しい内容を記入してください。訂正印は不要です。
労災様式5号の提出先と流れについて
様式5号は、労働者が受診している指定医療機関等に提出します。
その後、指定医療機関等から所轄の労働基準監督署長に提出される流れとなります。
なお、療養補償給付は電子申請も可能ですが、申請に当たっては、e-Gov電子申請アプリケーションのダウンロードが必要です。
また、一般的には電子署名が必要で、これを省略するにはGビズIDアカウントというものが必要となります。
労災様式5号の注意点

労災様式5号を提出する際の注意点は以下のとおりとなります。
薬局で薬の処方を受ける場合
院外処方で、労災保険指定薬局で薬を受け取る場合には、病院に提出したものとは別に、薬局分の様式5号の原本を提出しなければなりません。
病院に提出したもののコピーで対応することはできませんので、注意が必要です。
なお、労災指定ではない薬局から薬の院外処方を受ける場合には、様式5号ではなく様式7号を提出することになります。また、労災指定ではない病院を受診して労災指定薬局から薬の処方を受け取る場合には、病院に様式7号、薬局に様式5号を提出することとなります。
【参考】労働災害の休業補償
受診する医療機関を変更する場合
手術のために当初かかっていた医療機関から転院する場合や、当初かかっていた病院が自宅から遠かったため自宅近くの病院に転院する場合など、途中て受診する医療機関が変更する場合が生じることもあります。
労災指定病院から他の労災指定病院に転院する場合には、転院先の病院に様式6号を提出しますが、労災指定以外の病院で治療を受けていて(様式7号を提出)、労災指定病院に転院する場合には、転院先の病院に様式5号を提出することが必要となります。
療養補償給付の消滅時効
療養補償給付は、費用の支出が確定した日の翌日から2年で消滅時効が完成します。そのため、必要な補償を受けるためには、給付の請求手続を早めに行う必要があります。
傷病の程度などによっては、被災した労働者本人が申請書類を提出することが難しいこともあるでしょう。このような場合には、会社に代行を依頼することも可能です。
【参考】労働災害の慰謝料請求
労災分野に強い弁護士にご相談ください

ほとんどの方は労災に遭うのは初めてであるため、無事に給付を受けられるか不安になることと思われます。
また、会社側も、必ずしも労災の申請に協力的ではなかったり、担当者が手続に不慣れで、円滑に申請手続ができない場合も決して少なくありません。
そのため、労災保険の給付の申請手続でお困りの方は、労災分野に強い弁護士に相談することが望ましいといえます。
当事務所は、労災分野に詳しい弁護士が揃っています。労災保険の申請でお悩みがある方は、是非当事務所までお気軽にご相談ください。お待ちしています。