- 執筆者弁護士 山本哲也
労災事故に遭ったとき、受け取れるのは労災保険金だけに限りません。
会社に対しても損害賠償請求できる可能性があります。
以下ではどのような場合に会社に責任が認められるのか、会社に損害賠償請求する際の注意点を解説します。
1.会社に「安全配慮義務違反」がある場合
労災事故が起こったとき、会社に損害賠償義務が発生するのはどういったケースなのでしょうか?
それは会社に「安全配慮義務違反」がある場合です。
安全配慮義務とは、会社が労働者を働かせるときに、安全な環境を整えるべき義務です。会社と労働者との間には「雇用契約」が成立しており、会社はその契約にもとづいて労働者に適切な就業環境を提供すべき義務を負っています。
それにもかかわらず安全措置を講じずに危険な仕事をさせたりすると、会社には「安全配慮義務違反」が成立し、債務不履行責任が発生します。
たとえば次のような場合に、会社の安全配慮義務違反が認められ、損害賠償請求ができる可能性があります。
- 危険な作業をさせるときに安全装置を使っていなかった
- 異常な長時間労働を強いていた
2.「使用者責任」が発生する場合
労災事故では、他の同僚の過失によってけがをさせられるケースも多々あります。
そのような場合、行為者である同僚に「不法行為責任」が発生します。すると雇用者である会社にも「使用者責任」が発生します。
同僚と会社の不法行為責任は連帯責任になるので、労働者は会社にも同僚にも全額の損害賠償を求めることが可能です。
■ 関連リンク:他の従業員のミスが原因で怪我を負った場合、損害賠償請求はどうなる?
3.会社に責任が認められる場合
労災事故で会社に責任が認められるのは以下のようなケースです。
- 危険な作業をするのに安全装置が不十分であったため、けがをした
- 不衛生な環境で仕事をさせられて病気になった
- 違法な長時間労働を強いられていた
- 同僚の操作ミスによってけがをさせられた
- 同僚の運転する車に乗っていて交通事故に遭った
■ 関連リンク:自分にも過失があるが、会社に損害賠償請求できる?
4.会社に損害賠償請求しても解雇されない
労災事故に遭われた方は、会社に損害賠償請求をすると「解雇されるのではないか」「会社を辞めさせられるのではないか」と心配するケースがあります。
しかし会社に責任が発生する以上、労働者が会社に損害賠償請求するのは「法的な権利」であり、労働者が正当な権利を行使したからと言って解雇の理由にはなりません。
法律上、労災による休業中と休業明け30日は解雇できないというルールも存在します(労働基準法19条1項)。
万一解雇されたら不当解雇として争うことが可能ですし、場合によっては慰謝料も請求できます。
もちろん、解雇だけではなく減給や降格などのその他の不利益取扱いも認められません。
労災保険ではまかなえない慰謝料や休業補償の不足部分は、会社に損害賠償請求をしないと払ってもらえません。
■ 関連リンク:労災事故で損害賠償請求する際のポイント
労災に遭って会社に責任が発生するなら遠慮する必要はありません。自分一人で対応するのは心細いでしょうから、群馬県で労災に遭われた方は、当事務所の弁護士を頼ってください。
山本総合法律事務所では、労災事故に遭われてしまった皆様を経験豊富な労災チームがサポートします。
ご相談は来所やお電話でも無料でお受けしています。お気軽にお問合せください。