労災の後遺障害 10 級とは?適正な補償を受けとるために

労災の後遺障害 10 級とは?適正な補償を受けとるために

業務中の事故でケガを負い、深刻な症状が生じていませんか?

業務中・通勤中の事故により労災の後遺障害等級が認定されると、障害補償給付など様々な給付を受け取れます。等級は1級から14級まであり、症状の部位や程度に応じて細かく規定されています。

10級という等級は、数字だけ見れば比較的軽いものと思えるかもしれません。しかし、後遺障害が残っている以上は重大な症状であり、10級でも仕事や日常生活に多大な影響が生じているはずです。障害に対する適正な補償を受け取るためには、認定要件を把握したうえで書類を用意し、労災申請を行わなければなりません。

本記事では、労災の後遺障害10級に該当する症状、受け取れる補償金などについて解説しています。業務中・通勤中に事故に遭われた方は、ぜひ最後までお読みください。

労災保険における給付の種類

労災保険における給付の種類

業務中・通勤中の事故によりケガを負い労災(労働災害)に該当する場合には、労災保険から給付がなされます。

労災保険の主な給付は以下の通りです。

給付の種類概要
療養(補償)給付治療そのもの・治療に要する費用の給付
休業(補償)給付労災のために労働できないときの賃金補償
傷病(補償)年金療養開始から1年6ヶ月経過しても治癒せず一定の障害が残っているときの給付
障害(補償)給付治癒(症状固定)して後遺障害が残ったときの給付
介護(補償)給付介護が必要になった場合の給付
遺族(補償)給付死亡したときの給付
葬祭料・葬祭給付死亡時の葬儀費用

労災が認定されると、状況に応じてこれらの給付を受け取れます。なお、業務災害では「○○補償給付」、通勤災害では「○○給付」という名称になりますが、内容は変わりません。以下では、業務災害を前提として「○○補償給付」という言葉を用いて説明します。

【参考】【労災】労災の後遺障害等級認定の期限

障害補償給付について

労災によるケガ・病気が十分に回復しないときは、症状に応じて後遺障害が認定される可能性があります。後遺障害が認定された際に受け取れるのが「障害補償給付」です。

後遺障害等級は重い順に1級から14級に分かれています。障害補償給付の内容は、認定される等級によって異なります。

1級から7級までの障害が残った場合、「障害補償年金」「障害特別年金」といった年金の受給が可能です。8級から14級の場合には、「障害補償一時金」「障害特別一時金」という一時金としての給付になります。「障害補償年金」と「障害補償一時金」は1日あたりの平均賃金を基準に、「障害特別年金」と「障害特別一時金」はボーナスを基準に支給額が決まります。

これらに加えて、いずれの等級についても、「障害特別支給金」という定額の一時金が給付されます。

まとめると以下の通りです。

等級平均賃金基準の給付ボーナス基準の給付定額の一時金
1級から7級障害補償年金障害特別年金障害特別支給金
8級から14級障害補償一時金障害特別一時金障害特別支給金

したがって、後遺障害10級における障害補償給付は「障害補償一時金」「障害特別一時金」「障害特別支給金」の3種類です。金額など詳細は後述します。

【参考】労働災害と後遺障害等級認定

10 級とはどんな障害が該当するか

10 級とはどんな障害が該当するか

後遺障害が認定される症状は、部位ごとに細かく定められています。10級が認定される症状は以下の通りです。

1眼の視力が0.1以下になったもの

片方の眼の視力が、メガネやコンタクトにより矯正をしても0.1以下になった場合です。視力の測定は、一般的な視力検査と同様に、環の切れ目を答える方法で行われます。

片方の眼だけ視力が0.1以下になると10級ですが、視力が異なる数値の場合や、両眼に視力障害がある場合には、程度に応じて認定される等級が変わります。

正面視で複視を残すもの

複視とは、ものが二重に見える状態です。自覚があることに加えて、複視が残る明らかな原因が認められ、「へススクリーンテスト」という検査で基準を満たすと認定されます。

正面を見たときに複視の症状があるときは10級ですが、正面以外を見たときに複視である場合には13級となります。

そしゃく又は言語の機能に障害を残すもの

「そしゃく機能に障害を残す」とは、固形の食べ物を摂取した際にそしゃくできない、あるいは十分にそしゃくできないものがあることが医学的に確認できることをいいます。柔らかい食べ物ならそしゃくできても、硬い食べ物だとそしゃくできないような場合です。

「言語の機能に障害を残す」とは、4種の語音のうち1種の発音ができないことをいいます。

ここでいう4種の語音とは、

  • 口唇音(ま行、ぱ行、ば行、わ行、ふ)
  • 歯舌音(な行、た行、だ行、ら行、さ行、しゅ、し、ざ行、じゅ)
  • 口蓋音(か行、が行、や行、ひ、にゅ、ぎゅ、ん)
  • 喉頭音(は行)

です。

「そしゃく又は言語の機能に障害を残す」ときには10級ですが、両方の機能に問題があったり、障害の程度が重かったりすると、より上位の等級が認定されます。

14歯以上に対し歯科補てつを加えたもの

「歯科補てつ」とは、失ったあるいは3/4以上欠けた歯を、人工物で補うことです。差し歯、ブリッジ、インプラントなどを指します。

14以上の歯に「歯科補てつ」をしたときには10級が認定されます。より少ない本数の場合の等級は以下の通りです。

歯科補てつを加えた歯の数等級
10歯~13歯11級
7歯~9歯12級
5歯~6歯13級
3歯~4歯14級

両耳の聴力が1m以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの

両耳について以下のいずれかの状態になった場合です。

  • 平均純音聴力レベル50デシベル以上
  • 平均純音聴力レベル40デシベル以上かつ最高明瞭度70%以下

50デシベルは静かな事務所内、40デシベルは図書館の騒音が目安になります。最高明瞭度70%以下とは、言葉を正しく聴き取れる割合が7割以下になった状態です。

いずれについても日常的なコミュニケーションに支障が生じる状態といえます。より聞こえづらい場合には別の等級が認定されます。

1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの

片方の耳の平均純音聴力レベルが「80デシベル以上90デシベル未満」になった状態です。

80デシベルの目安は走行中の電車内の騒音です。相当大きな音でも聴き取れなくなった状態といえます。

1手の母指又は母指以外の2の手指の用を廃したもの

「手指の用を廃した」とは、以下のいずれかの状態です。

  • 末節骨(指の先端の骨)の1/2以上を失った
  • 第2関節あるいは第3関節(親指については第1関節あるいは第2関節)の可動域が1/2以下になった
  • 指の痛み、温度、触感といった感覚が完全に失われた

片方の手の「親指だけ」もしくは「親指以外の2つの指」について「手指の用を廃した」状態となれば、10級が認定されます。「用を廃した」指の種類や本数によっては、別の等級となります。

【参考】右環指、小指切断で10級6号が認定され、約1211万円が補償された事例

1下肢を3cm以上短縮したもの

事故の影響で片方の足が3cm以上(5cm未満)短くなった場合には、10級が認定されます。5cm以上の場合は8級、1cm以上(3cm未満)のときは13級です。

1足の第1の足指又は他の4の足指を失ったもの

「足指を失った」といえるのは、根元から完全になくなった場合です。

片方の足について、「親指を失った」あるいは「親指以外の4本の指を失った」ときに10級が認定されます。失った指の種類や本数に応じて等級は変わります。

1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの

  • 「関節の機能に著しい障害を残す」とは以下のいずれかの状態を指します。
  • 関節の可動域が健康な側の1/2以下に制限されている
  • 人工関節を挿入し、可動域は健康な側の1/2を超えている

「上肢の3大関節」とは、肩関節・肘関節・手関節です。片方の腕の「3大関節」のうち1つの関節について「機能に著しい障害を残す」といえれば10級が認定されます。障害のある関節の数や程度によっては別の等級となります。

1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの

上肢の場合と同様に、「関節の機能に著しい障害を残す」とは以下のいずれかの状態を指します。

  • 関節の可動域が健康な側の1/2以下に制限されている
  • 人工関節を挿入し、可動域は健康な側の1/2を超えている

「下肢の3大関節」とは、股関節・膝関節・足関節です。片方の足の「3大関節」のうち1つの関節について「機能に著しい障害を残す」といえれば10級が認定されます。障害のある関節の数や程度によって等級は変わります。

労災後遺障害 10 級の補償金はどのくらいなのか

労災後遺障害 10 級の補償金

労災が認定されると、療養補償給付(治療費)や休業補償給付などが支給されます。休業補償給付の金額は、休業補償給付として給付基礎日額の60%、休業特別支給金として給付基礎日額の20%の計80%です。「給付基礎日額」とは、災害発生以前の3ヶ月分の合計賃金を3ヶ月の歴日数で割って算出した1日あたりの平均賃金をいいます。

加えて後遺障害10級が認定されると、障害補償一時金、障害特別一時金、障害特別支給金が支払われます。10級の場合の金額はそれぞれ以下の通りです。

  • 障害補償一時金:給付基礎日額の302日分
  • 障害特別一時金:算定基礎日額の302日分
  • 障害特別支給金:39万円(定額)

前述の通り、「給付基礎日額」は災害発生以前の3ヶ月分の合計賃金を3ヶ月の歴日数で割って算出した1日あたりの平均賃金です。「算定基礎日額」は、災害発生以前の1年間のボーナス総額を日数(365日)で割った金額です。したがって、障害補償一時金と障害特別一時金を合わせると、約10か月分の賃金相当額(ボーナス含む)になります。プラスして39万円の障害特別支給金を受け取れます。

たとえば、以下のケースで考えましょう。

  • 月給30万円
  • 1年のボーナス:73万円
  • 2025年4月1日に事故に遭った
  • 「肩関節の機能に著しい障害を残す」として後遺障害10級が認定された

このケースでは次のように計算できます。

  • 障害補償一時金:302万円

「給付基礎日額」は、3ヶ月の賃金90万円を90日(1月:31日、2月:28日、3月:31日)で割って1万円。よって、障害補償一時金は1万円×302日分=302万円

  • 障害特別一時金:60万4000円

「算定基礎日額」は、1年のボーナス73万円を365日で割って2000円。よって、障害特別一時金は2000円×302日分=60万4000円

  • 障害特別支給金:39万円(定額)

合計して、障害補償給付は401万4000円

※他にも、休業補償給付等を受け取れる

なお、以上は労災保険から受け取れる給付です。会社に責任があるときには、労災でカバーされない分の休業損害、逸失利益、慰謝料などを別途会社に請求できます。たとえば後遺障害慰謝料だけでも10級では550万円となるため、多額の賠償金を会社に支払ってもらえる可能性があります。

【参考】労災保険の給付では不十分?

申請方法とポイント

ポイント

労災の申請は、申請書を作成して必要書類を用意し、労働基準監督署に提出することにより行います。様式は厚生労働省のサイトからダウンロードが可能です。給付の種類に応じて様式が用意されています。

特に後遺障害認定に関しては、必要な検査をしたうえで医師に診断書を作成してもらわなければなりません。医師が後遺障害の認定に詳しくないケースもあるため、必要な検査や診断書作成がなされないおそれがあります。後遺障害認定の有無や等級によって受け取れる金額が大きく変わるため注意してください。

適切に認定を受けるには、労災に詳しい弁護士への相談が効果的です。弁護士に依頼すれば、症状に応じて適正な等級認定を受けられます。加えて、労災保険では補償されない部分についても会社に対して交渉や訴訟を通じて請求できます。金銭的に補償を受けられるだけでなく、各種手続きを任せられるためご自身は治療や日常生活に集中でき、精神的なストレスが軽減されるはずです。

【参考】労災事故の対処方法② 後遺障害申請をする際の注意点

労災によってケガをした際は、弁護士法人山本総合法律事務所までご相談ください。

集合写真

当事務所は、群馬県内でも規模が大きい弁護士事務所のひとつです。これまで、群馬・高崎に密着して、地域の皆様から労災に関する数多くの相談を受けて参りました。後遺障害認定に関しては豊富な経験・知見があり、難しいご依頼でも弁護士がチームを組んで対応するなど、皆様を徹底的にサポートいたします。

当事務所では、労災に関する相談を何度でも無料としております。交渉や後遺障害認定サポートの着手金も無料であり、すぐにお金を用意できない方でもご相談・ご依頼いただけます。

事故直後から給付のご案内、申請のサポート、治療に関するアドバイスなど、様々な面で手助けが可能です。「会社が協力してくれない」「後遺障害が認定されるかわからない」といったケースでも構いません。労災事故に遭われた方は、まずはお気軽にお問い合わせください。

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