労災の後遺障害7級

労災の後遺障害7級

労災による傷病が完治せず、何らかの障害が残ってしまったとしても、後遺障害等級が認定されれば補償内容が大きく変わります。後遺障害等級は、1級から14級まであり、その中でも後遺障害7級は、視力や聴力、四肢の機能、内臓や神経の障害など、労働能力に重大な制限が生じるケースに該当する重要な等級です。

しかし、後遺障害7級の認定基準は、非常に細かく、適切な等級を受けるには医学的・法律的な根拠の裏付けが欠かせませんので、早めに弁護士に相談することが大切です。

本記事では、後遺障害7級の具体的な認定基準や受け取れる補償内容の詳細、適切な認定を受けるためのポイントについて、労災に精通した弁護士の視点でわかりやすく解説します。

今後の生活の安定のためにも、ぜひ参考にしてください。

労災の後遺障害等級とは?

後遺障害について悩んでいる男性

労災によるケガや病気の治療を続けても、必ずしも元通りの健康状態に回復するとは限りません。治療を受け続けたとしても、後遺症が残るケースもありますが、その場合でも後遺障害等級が認定されれば、労災保険による補償の対象となります。

後遺障害等級は1級から14級までの等級に分けられており、数字が小さいほど重度の障害とされ、支給される給付の額も大きくなる仕組みです。

後遺障害等級が認定される事案では、労働や日常生活への支障が生じていますので、少しでもその不利益を軽減するには、適切な等級での認定を受け、相応の補償を受け取ることが非常に重要です。

後遺障害7級の認定基準

目を押さえてる男性

後遺障害等級7級が認定される症状には、以下のようなものがあります。労災で後遺障害等級認定を受けるには、認定基準に該当する必要がありますので、症状ごとの認定基準を押さえておくことが大切です。

1眼が失明し、他眼の視力が0.6以下になったもの

失明とは、眼球を摘出したもの、明暗を弁じ得ないものおよびようやく明暗を弁ずることができる程度のものをいいます。

片方の眼を失明し、もう片方の眼の視力が0.6以下になった場合、後遺障害7級が認定されます。

両耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの

これは以下のいずれかに該当する状態をいいます。

  • 両耳の平均純音聴力レベルが70db以上のもの
  • 両耳の平均純音聴力レベルが50db以上であり、かつ最高明瞭度が50%以下のもの

1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの

これは以下のいずれも満たす状態をいいます。

  • 1耳の平均純音聴力レベルが90db以上のもの
  • 他耳の平均純音聴力レベルが60db以上のもの

神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの

一応労働することはできるが、労働能力に支障が生じ、軽易な労務にしか服することができないものをいいます。たとえば、頻繁に指示しなくても労務を遂行できるが、効率が悪い・ミスが多いなどの状態です。

胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの

胸腹部臓器の障害は、呼吸器、循環器、腹部臓器、泌尿器の4つの部位に分けられます。

呼吸器の障害

呼吸機能の障害は、「動脈血酸素分圧と動脈血炭酸ガス分圧の検査結果による判定」、「スパイロメトリーの結果および呼吸困難の程度による判定」により判断します。

【動脈血酸素分圧と動脈血炭酸ガス分圧の検査結果による判定】

動脈血酸素分圧と動脈血炭酸ガス分圧の検査結果による判定結果が、以下のいずれも満たす場合、後遺障害7級が認定されます。

  • 動脈血酸素分圧が60Torrを超え70Torr以下であるもの
  • 動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲外にあるもの

【スパイロメトリーの結果および呼吸困難の程度による判定】

以下のいずれかに該当する場合、後遺障害7級が認定されます。

  • スパイロメトリーの結果が1秒量あたり35%以下または肺活量が40%以下の場合で、呼吸困難の程度が中等度(呼吸困難のため、平地でさえ健常者と同様には歩けないが、自分ペースでなら、1km程度の歩行が可能であるもの)の場合
  • スパイロメトリーの結果が1秒量あたり35%を超え55%以下または肺活量が40%を超え60%以下の場合で高度(呼吸困難のため、連続して概ね100m以上歩けないもの)または中等度の呼吸困難が認められる場合

循環器の障害

循環器の障害が後遺障害7級と認められるのは、除細動器を植え込んだ場合です。

腹部臓器の障害

【胃の障害】

胃の全部または一部を失ったことによる障害は、そのことにより生じる症状の有無により等級認定が行われます。後遺障害7級が認定されるのは、以下の症状です。

消化吸収障害ダインピング症候群胃切除術後逆流性食道炎
第7級ありありあり

【小腸および大腸の障害】

小腸および大腸の障害が後遺障害7級と認められるのは、以下の場合です。

  • 人工肛門を造設したもの(5級に該当するものを除く)
  • 小腸(または大腸)の皮膚瘻を残し、瘻孔から小腸(または大腸)内容の全部または大部分が漏出するもの
  • 小腸(または大腸)の皮膚瘻を残し、瘻孔から漏出する小腸(または大腸)内容がおおむね100ml/日以上のものであって、パウチ等による維持管理が困難であるもの
  • 完全便失禁

泌尿器の障害

泌尿器の障害は、じん臓、尿管・膀胱・尿道の障害に分けられます。

【じん臓の障害】

じん臓の障害は、一側のじん臓を失った場合と失っていない場合で区分し、腎臓機能の低下の程度(GFRで判定)により等級を認定します。じん臓の障害で後遺障害7級が認定されるのは、以下の場合です。

  • 腎臓を失った場合で、GFR値が31ml/分~50ml/分であるもの

【尿管・膀胱・尿道の障害】

尿管・膀胱・尿道の障害で後遺障害7級が認定されるのは、以下の場合です。

  • 非尿禁制型尿路変向術を行ったもの(第5級に該当するものを除く)
  • 禁制型尿リザボアの術式を行ったもの
  • 持続性尿失禁を残すもの

・切迫性尿失禁又は腹圧性尿失禁のため、終日パッド等を装着し、かつ、パッドをしばしば交換しなければならないもの

1手の母指を含み3の手指又は母指以外の4の手指を失ったもの

片手の親指を含めた3本の指または親指以外の4本の指を失った場合、後遺障害7級が認定されます。

手指を失うとは、以下のいずれかの状態をいいます。

  • 手指を中手骨または基節骨で切断したもの
  • 近位指節間関節において、基節骨と中節骨とを離断したもの

1手の5の手指又は母指を含み4の手指の用を廃したもの

片手の帆本すべての指または親指を含めた4本の指の用を廃した場合、後遺障害7級が認定されます。

手指の用を廃したものとは、以下のいずれかの状態をいいます。

  • 手指の末節骨の長さの2分の1以上を失ったもの
  • 中手指節関節または近位指節間関節(親指にあっては指節間関節)の可動域が、健側の可動域角度の2分の1以下に制限されるもの

1足をリスフラン関節以上で失ったもの

足をリスフラン関節以上で失ったものとは、以下のいずれかに該当するものをいいます。

  • 足根骨(踵骨、距骨、舟状骨、立方骨及び3個の楔状骨からなる)において切断したもの
  • リスフラン関節において中足骨と足根骨とを離断したもの

1上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの

上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すものとは、以下のいずれかに該当し、常に硬性補装具を必要とするものをいいます。

  • 上腕骨の骨幹部または骨幹端部に、ゆ合不全を残すもの
  • 橈骨及び尺骨の両方の骨幹部等に、ゆ合不全を残すもの

1下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの

下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すものとは、以下のいずれかに該当し、常に硬性補装具を必要とするものをいいます。

  • 大腿骨の骨幹部等に、ゆ合不全を残すもの
  • 脛骨及び腓骨の両方の骨幹部等に、ゆ合不全を残すもの
  • 脛骨の骨幹部等に、ゆ合不全を残すもの

両足の足指の全部の用を廃したもの

両足のすべての指の用を廃した場合、後遺障害7級が認定されます。

足指の用を廃したものとは、以下のいずれかの状態をいいます。

  • 親指の末節骨の長さの2分の1以上を失ったもの
  • 親指以外の足指を中節骨もしくは基節骨を切断したものまたは遠位指節間関節もしくは近位指節間関節において離断したもの
  • 中足指節関節または近位指節間関節(親指にあっては指節間関節)の可動域が健側の可動域角度の2分の1以下に制限されるもの

外貌に著しい醜状を残すもの

外貌とは、頭部、顔面部、頸部のように、上肢・下肢以外の日常露出する部分をいいます。

外貌に著しい醜状を残すものとは、原則として以下のいずれかに該当し、人目につく程度以上のものをいいます。

  • 頭部は、手のひら大(指の部分は含まない)以上の瘢痕(はんこん)、または、頭蓋骨の手のひら大以上の欠損
  • 顔面部は、鶏卵大面以上の瘢痕、または、10円銅貨大以上の組織陥没
  • 頸部は、手のひら大以上の瘢痕

両側のこう丸を失ったもの

男性が両側のこう丸を失った場合、後遺障害7級が認定されます。

【参考】労働災害と後遺障害等級認定

後遺障害7級で受け取れる給付

後遺障害7級で受け取れる給付

労災による傷病で後遺障害7級が認定されると、労災保険から以下のような補償が支給されます。

障害(補償)給付

障害(補償)給付とは、労災による傷病で障害が残った場合に支給される補償です。障害(補償)給付には、障害の程度に応じて「障害(補償)年金」と「障害(補償)一時金」の2種類がありますが、後遺障害7級の場合は、障害(補償)年金が支払われます。

具体的な金額は、給付基礎日額の131日分です。

給付基礎日額とは、原則として労働基準法の平均賃金に相当する額をいい、労災事故発生日の直前3か月間に労働者に支払われた金額の総額をその期間の歴日数で割った、1日あたりの賃金額を指します。

障害特別支給金

障害特別支給金とは、労働者災害補償保険法29条の社会復帰促進等事業の一環として支払われる補償で、労災保険給付に上乗せして一時金として支払われます。障害特別支給金は、障害の程度に応じて金額が定められており、後遺障害7級の場合は、159万円になります。

障害特別年金

障害特別年金とは、障害特別支給金と同様に労災保険給付に上乗せして支払われる補償で、障害の程度に応じて年金として支払われます。

後遺障害7級の場合は、算定基礎日額の131日分です。

算定基礎日額とは、労災事故発生日前の1年間に労働者に支払われた特別給与の総額(算定基礎年額)を365日で割った、1日あたりの賃金額です。

特別給与とは、ボーナスや期末手当など3か月を超える期間ごとに支払われる賃金をいい、臨時に支払われた賃金は含まれません。

【参考】労災保険の給付では不十分?

適切な後遺障害等級認定を受ける重要性

労災について弁護士に相談している様子

労災保険の給付額や補償内容は、認定された後遺障害等級によって大きく左右されます。そのため、どの等級が認められるかは、受け取れる補償の総額に直結する極めて重要な要素です。

さらに、勤務先企業に対して損害賠償請求を行う際には、後遺障害を理由とした慰謝料や逸失利益なども請求することになりますが、これらの金額は原則として後遺障害等級に基づいて算出されます。つまり、もし不適切な等級が認定されてしまえば、本来受け取れるはずの賠償額が大きく減額されてしまう可能性があるのです。

このような損失を避け、正当な評価を受けるためには、後遺障害等級の認定制度や労災の手続きに精通した弁護士のサポートを受けることが効果的です。万が一、労災により障害が残ってしまった場合は、なるべく早い段階で法律の専門家に相談することを強くおすすめします。

【参考】労働災害を弁護士に相談すべき3つの理由

労災事故の後遺障害は詳しい弁護士に相談を

集合写真

後遺障害7級に該当するような事案には、幅広い症状や事例が含まれており、個々のケースごとに詳細な認定基準が設定されています。そのため、専門知識がないまま手続きを進めてしまうと、妥当な等級が得られないおそれがあります。

もし実際よりも低い等級が付された場合には、その分だけ将来にわたって受け取れる補償額が大きく下がってしまうリスクがあるため、後遺障害が疑われる状況では、なるべく早い段階で専門の弁護士に相談することが重要です。

弁護士法人山本総合法律事務所は、群馬県内でも有数の規模と実績を持つ法律事務所として、多くの労災関連のご相談を承ってきました。高崎を中心に地域に根差した活動を展開しており、後遺障害等級認定に関するサポートにも豊富な実績があります。

当事務所では、複雑な事案に対しても複数の弁護士が協力して対応し、一人ひとりの事情に寄り添った丁寧なリーガルサポートを心がけています。労災や後遺症に関する不安がある方は、ぜひお気軽に無料相談をご利用ください。

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