労災の病院変更が認められる理由とは?労災治療の転院について解説

労災の病院変更が認められる理由とは?労災治療の転院について解説

労災事故で怪我をして治療を続ける中で、「今の病院で本当に大丈夫なのか」「別の病院で診てもらいたい」と感じる方も少なくありません。

しかし、労災治療中に自由に病院を変更できるのか、どのような場合に認められるのか、手続き方法がわからず悩む人も多いでしょう。

本記事では、労災治療中に病院変更が可能かどうか認められるケースや注意点、転院するための手続き方法など労災の病院変更に関する基本事項を詳しく解説します。

労災治療中の病院変更は可能?

結論からいえば、労災治療中でも病院変更(転院)は可能です。

どこの病院で治療するかは、労働者本人が自由に決めるべき事項ですので、労災の治療だからといって制限されることはありません。

たとえば、より専門的な治療を受ける必要がある場合や、現病院では対応できない治療が必要になった場合など病院変更が必要になったときは、遠慮せずに別の病院への転院を検討しましょう。

ただし、後述するように病院変更には一定の手続きが必要になります。

労災治療中に病院を変更が認められるケース

労災治療中に病院を変更が認められるケース

労災治療中に病院変更が認められる具体的ケースは、以下のとおりです。

現在の病院では専門治療ができない場合

たとえば、骨折治療で通院していた整形外科では対応できない神経損傷の手術や再建手術が必要になった場合または複雑骨折で高度な固定術や再手術が必要となる場合は、専門医のいる総合病院や大学病院への転院が認められることが多いです。

このように治療上必要性が明確であれば、病院変更も認められやすいでしょう。

治療方針や医療技術面で不安がある場合

現在の病院では治療内容に限界がある、担当医師の専門領域外である、最新医療機器や治療法が導入されていないといった場合も、転院理由として認められます。

たとえば、

  • プレート固定後の骨癒合が進まず、より専門的な骨移植術が必要
  • 職業復帰に向けた専門的作業療法プログラムがない
  • 手術適応の判断やセカンドオピニオンを専門医に求めたい

など単なる不満ではなく、治療効果や回復を高める合理的根拠があることが重要です。

引っ越しなどやむを得ない事情で通院困難になった場合

転居により通院時間が片道2時間以上かかる、交通手段がないなど物理的に通院継続が困難になった場合は、生活上やむを得ない事情として転院が認められることが一般的です。

特に、治療が長期に及ぶ場合や、回復後のリハビリ通院が続く場合には、通院負担が患者の身体的・精神的負担になるため、転院希望が合理的理由と判断されやすくいでしょう。

主治医から転院を勧められた場合

治療経過の中で、主治医自身が「当院での治療はここまでが限界」「この先はより専門的な医療機関で治療するべき」と判断し、紹介状を出してくれるケースも多いです。

主治医が医療上必要と判断してすすめる場合は、病院変更が認められやすいでしょう。

【参考】転倒事故による労災の慰謝料

労災治療中の病院変更で気を付けるべきケース

弁護士が人差し指を立てている様子

「医師の態度が悪い」「主治医と折り合いが悪い」という理由だけでは、病院変更が認められない場合があります。

なぜなら、病院変更をする際に労働基準監督署に提出する書類には、「変更理由」を記載する欄があり、合理的な変更理由を記載しなければならないからです。「主治医と折り合いが悪い」などの理由では病院変更をする合理的な理由とはいえませんので、他の理由を記載するようにしましょう。

労災治療の転院で必要な準備とは

労災治療の転院で必要な準備とは

病院変更を希望する際は、以下の準備をしておくとスムーズです。

会社から労災保険の申請書類に事業主証明をもらう

労災治療の転院をする際には、労災関連勝利の提出が必要になります。この書類には、事業主証明欄がありますので、病院変更をスムーズに進めるためにも、事前に会社から証明をもらっておくとよいでしょう

転院先の選定

転院先を決める際には、以下のポイントを確認することが重要です。

労災指定病院かどうか

労災指定病院でない場合、窓口での治療の支払いが必要になります。立て替えて支払った治療費は後日申請することで戻ってきますが、面倒な手続きを省くためにも労災指定病院を選ぶのがおすすめです。

治療内容や専門性

自分のケガや病状に最も適した診療科、治療設備があるかどうかを確認しましょう。

通院可能性(距離・交通手段・時間)

長期通院の場合、無理なく通えるかは大切なポイントです。

また、転院を希望する病院に「労災治療を受け入れてもらえるか」を事前に問い合わせておくとよいでしょう。

主治医からの紹介状取得

転院時には、現在の主治医から紹介状をもらうようにしてください。

紹介状にはこれまでの診療経過、検査結果、画像データの読影所見、投薬内容などが記載され、スムーズに治療を引き継ぐために不可欠です。

また、紹介状があることで転院先医師の診療負担が減り、適切で迅速な治療が受けやすくなるというメリットもあります。

紹介状の作成には数日かかることもあるため、転院意思を固めたら早めに依頼するようにしましょう。

【参考】【労災】労災の後遺障害等級認定の期限

労災治療中に病院を変更するための手続き

包帯をしている男性の手元

労災治療中に病院を変更するには、以下の手続きが必要です。

労災指定病院から別の労災指定病院に転院する場合の手続き

労災指定病院から別の労災指定病院に転院する場合、転院先の病院に以下の書類を提出します。

  • 療養補償給付たる療養届の給付を受ける指定病院等(変更)届(様式第6号:業務災害用)
  • 療養給付たる療養の給付を受ける指定病院等(変更)届(様式第16号の4:通勤災害用)

労災指定病院から労災指定病院以外の病院に転院する場合の手続き

労災指定病院から労災指定病院以外の病院に転院する場合、転院先の病院に提出すべき労災関連書類はありません。そのため、転院前の病院からもらった紹介状を持参して、転院先の病院を受診するようにしましょう。

なお、労災指定病院以外の病院では、労働者が一旦治療費を立て替えて支払う必要がありますが、後日以下の書類を労働基準監督署に提出することで立て替えた治療費が指定口座に支払われます。

  • 療養補償給付たる療養の費用請求書(様式第7号:業務災害用)
  • 療養給付たる療養の費用請求書(様式第16号の5:通勤災害用)

労災指定病院以外の病院から労災指定病院に転院する場合の手続き

労災指定病院以外の病院から労災指定病院に転院する場合、転院先の病院に以下の書類を提出します。

  • 療養補償給付たる療養の給付請求書(様式第5号:業務災害用)
  • 療養給付たる療養の給付請求書(様式第16号の3:通勤災害用)

労災指定病院以外の病院から別の労災指定病院以外の病院に転院する場合の手続き

労災指定病院以外の病院から別の労災指定病院以外の病院に転院する場合、転院先の病院に提出すべき労災関連書類はありません。

一旦労働者が治療費を立て替えて支払った後、以下の書類を労働基準監督署に提出することで立て替えて支払った治療費が指定口座に支払われます。

  • 療養補償給付たる療養の費用請求書(様式第7号:業務災害用)
  • 療養給付たる療養の費用請求書(様式第16号の5:通勤災害用)

【参考】労災事故の対処方法① 事故直後・治療中の方がすべきこと

労災事故の原因が会社にある場合は、損害賠償請求が可能

弁護士に相談している様子

労災保険からはさまざまな補償が受けられますが、労災保険の補償には慰謝料が含まれておらず、障害が残った場合の補償も十分なものとはいえません。そのため、労災保険からの補償だけでは不足する部分については、会社への損害賠償請求を検討する必要があります。

ただし、会社に対して損害賠償請求をするには、安全配慮義務違反または使用者責任が認められることを主張立証していかなければなりません。

会社に対する損害賠償請求には証拠や法的知識が必要なため、専門家への相談をおすすめします。

【参考】労災における安全配慮義務違反とは?会社に損害賠償請求できる?

労災に被災した際は弁護士に相談を

集合写真

労災治療や転院手続き、さらに会社への損害賠償請求まで、被災者本人だけで対応するのは大きな負担です。

弁護士に相談することで、

  • 病院変更や手続き書類の作成サポート
  • 会社の法的責任を立証するための証拠収集のサポート
  • 適正な損害賠償額の算定
  • 会社との交渉や訴訟対応

など、被災者が安心して治療に専念できる環境を整えることができます。

労災治療や転院、損害賠償請求でお悩みの際は、労災問題に詳しい弁護士法人山本総合法律事務所までお気軽にご相談ください。

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