- 執筆者弁護士 山本哲也
ご依頼者様データ
ご依頼者様 | 30代男性(桐生市) |
職業(事故当時) | 真空成型オペレーター |
業務内容 | プラスチックを成型する機械の操作をする業務 |
傷病名 | 右手小指の先及び薬指の第一関節までを切断 |
後遺症の内容 | 切断部の痛み |
後遺障害等級 | 第10級6号 |
災害の状況
依頼者は、プラスチックの成型品をカットするためにシャー(カッター)を単動にする際に、単動の切り替えを忘れてしまい、連動の状態であったため、指が挟まったままの状態でシャーが動き出してしまい、右手小指の先と薬指の第一関節を誤って刃物で切断したという事故でした。
その後、救急搬送されましたが、指の再建は不可能と判断され、傷口を癒合する処置が施されました。
相談・依頼のきっかけ
依頼者は、治療中に今後の流れについてどのようになるか不安であるということでご相談にお見えになりました。
当方から、まずは後遺障害の認定手続について説明し、後遺障害が認定された後に、相手方企業に安全配慮義務がある場合には、労災給付を超える部分について、損害賠償請求を行うことになると説明を行いました。
依頼者より、後遺障害の認定から示談交渉に至るまでお任せしたいとご要望があり、ご依頼となりました。
解決方法
- 後遺障害等級認定サポート
- 相手方企業との示談交渉
解決金額
労災支給額 | 約409万円 |
会社からの賠償額 | 約800万円 |
総額 | 約1200万円 |
解決のポイント
受任後に、後遺障害の認定時に使用された資料を、保有個人情報開示請求を行い取り寄せを行いました。依頼者が、受領した労災支給額を確定するとともに、資料を精査し、相手方企業に賠償可能な損害賠償額を算定しました。算定の結果、労災支給額を上回る損害賠償請求が可能でしたので、相手方企業に対して、内容証明郵便を送付し、賠償額の交渉をスタートしました。
相手方企業の主張は、「日頃からシャー付近に手を入れないように注意を喚起することやシャー付近に手を入れにくいように防止措置を講じていたため、会社側に安全配慮義務違反はなく、賠償責任はない。」というものでした。
もっとも、本件では、依頼者が、入社してから間もない状況下において機械操作を一人で行っていたことや上司の教育体制が不十分であったことが明らかであったため、これらを前提にすれば、労働安全衛生法及び同規則違反があり、これにより安全配慮義務違反を構成できると反論を行いました。
その結果、相手方企業は、安全配慮義務違反を認め、賠償責任を負うことを前提に交渉を前に進めることができました。
最終的に、依頼者側も、機械のシャー付近に手を差し入れなければ、本件事故が発生しなかったことから、一定の過失を前提に過失相殺を行って、訴外での合意に至りました。
労災事案においては、相手方企業が素直に損害賠償責任を肯定することはほとんどありません。
このような場合には、弁護士を介入させて、具体的な事故状況を下に、法的根拠を示すことにより交渉を優位に進めることが重要となります。
労災でお困りの方は、当事務所にご相談いただければ具体的なアドバイスができますので、お気軽にお問い合わせいただければと思います。