ひかれた・衝突事故

重機や車両を扱う職場では、フォークリフトでひかれた、トラックやダンプと衝突したという事故が発生する可能性があります。このような事故に巻き込まれてしまった場合には、労働災害として、労災保険から補償を受けることができます。

しかし、労災保険からの補償だけでは十分なものとはいえませんので、会社・元請に対する、損害賠償請求も検討する必要があります。では、どのような場合に、会社や元請に対して、労災事故による損害賠償請求をすることができるのでしょうか。

今回は、ひかれた・衝突された労災事故の事例と会社・元請への損害賠償請求のポイントなどについて、わかりやすく解説します。

実際にあった「ひかれた」「衝突された」労災事故の例

労災事故の例

重機や車両を用いて作業をする職場では、「ひかれた」、「衝突された」という労災事故が発生しています。以下では、実際にあった「ひかれた」、「衝突された」労災事故の例をいくつか紹介します。

フォークリフトを運転中に、歩行中の労働者と衝突した事例

フォークリフトでパレットの移動作業をしていた際、前方が見えなくなるほど高くパレットを積み走行していたところ、歩行中の労働者に気付かずに後ろから衝突してしまったという事例です。

被災労働者は、この事故でパレットの最下段に両足首が当たり、負傷してしまいました。

【参考】【労働災害】フォークリフトの労災事故

工場敷地内でトラクターショベルにひかれた事例

工場敷地内を走行中のホイール式トラクターショベルをバックさせて方向転換しようとしたところ、たまたま事務所から歩いてきた事務員をひいてしまったという事例です。

被災労働者は、この事故により死亡してしまいました。事故現場では作業者と車両の通路の区別がなく、運転者が後方確認を怠ったことが労災事故の原因とされています。

道路舗装現場で警備員がローラーに衝突された事例

道路舗装工事現場においてローラーを運転して、アスファルト合材の締め固め作業をしていたところ、警備員がローラーに衝突されたという事例です。

被災労働者は、その後病院に搬送されましたが、肺出血により死亡してしまいました。

労災事故による損害は誰に対して請求する?

労災の請求

労災事故が発生した場合、被災労働者に生じた損害は、どのように補填されるのでしょうか。

労災保険からの補償だけでは不十分

業務中または通勤中の事故により、怪我・病気・死亡した場合、労働基準監督署による労災認定を受ければ、労災保険から以下の補償が支払われます。

  • 療養(補償)給付
  • 休業(補償)給付
  • 障害(補償)給付
  • 傷病(補償)年金
  • 介護(補償)給付
  • 遺族(補償)給付
  • 葬祭料、葬祭給付

しかし、労災保険から支払われる補償だけでは、被災労働者に生じた損害のすべてを補填することはできません。そのため、労災保険給付を受けられる場合であっても、別途、会社や元請などへの責任追及を検討する必要があります。

【参考】労災保険の給付では不十分?

会社や元請に安全配慮義務違反があった場合

安全配慮義務とは、労働者が健康的かつ安全に働くことができるよう配慮すべき会社の義務です。会社に安全配慮義務違反があった場合には、労働者は、会社に対して、労災により生じた損害の賠償請求を行うことができます。

たとえば、ひかれた事故や衝突された事故が生じる可能性のある職場では、安全に対する教育を実施する、歩行者用の通路と車両用の通路を区別するなどの対策を講じることが会社の義務といえるでしょう。

他方、元請と下請の労働者との間には、直接の契約関係はありませんので、原則として安全配慮義務を負うことはありません。しかし、元請と下請の労働者との間に実質的な使用関係または間接的な指揮監督関係が存在する場合には、安全配慮義務違反を理由に損害賠償請求をすることが可能です。

【参考】【労働災害】爆発・火災・巻き込まれ・転落などの事故によりケガを負ったら?

他の従業員の過失により怪我をした場合

他の従業員の過失により怪我をした場合には、当該従業員に対して、損害賠償請求ができるのはもちろんですが、当該従業員を雇用する会社に対しても、損害賠償請求をすることができます。このような会社の責任を「使用者責任」といいます。

被災労働者は、加害者である従業員個人と会社の双方に対して、損害賠償請求ができますが、一般的には、資力のある会社に対して請求していくことになります。

会社・元請の法的責任を追及する際のポイント

point

会社および元請への法的責任を追及する場合には、以下のポイントを押さえておきましょう。

法的責任を立証するための証拠を集める

会社や元請に対して、労災による損害賠償請求をするためには、被災労働者の側で、会社の法的責任を立証していかなければなりません。そのためには、機械の点検記録、安全教育の実施記録などの証拠を集める必要があります。

証拠がない状態では、会社への責任追及は困難ですので、十分な証拠を集めてから損害賠償請求を行うようにしましょう。

【参考】労災事故の対処方法③ 会社に損害賠償請求する際の注意点

適正な障害等級認定を受ける

労災による怪我の治療を続けても完治せず、何らかの障害が残ってしまった場合には、障害等級認定を受けることができます。障害等級認定を受けられれば、労災保険から障害(補償)給付が支払われるだけでなく、会社への損害賠償請求の際に、後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益を請求することが可能です。

障害等級には1級から14級まであり、それぞれの等級に応じて支払われる労災保険給付や損害賠償額が異なってきます。そのため、適正な障害等級認定を受けることが重要です。

【参考】労働災害と後遺障害等級認定
【参考】建設現場における労災事故があった場合の補償について解説

被災労働者にも過失があるときは過失相殺される

労災事故では、会社側だけでなく、被災労働者の側にも過失が認められるケースが多いです。このようなケースでは、過失相殺により被災労働者側の過失割合に応じて、支払われる賠償額が減額されてしまいます。

被災労働者に過失があったとしても、会社側の言いなりになって過失割合を定めてしまうと、不利益を被るおそれもありますので、しっかりと争っていくことが大切です。

【参考】Q.自分にも原因(過失)があります。それでも、労災保険の給付請求や会社に対して損害賠償などを請求出来ますか?

「ひかれた」「衝突された」労災事故は、弁護士に相談を

弁護士一同

ひかれた・衝突された労災事故の被害に遭った労働者の方は、会社や元請に対して、損害賠償請求できる可能性がありますので、まずは弁護士に相談することをおすすめします。

会社・元請の法的責任の有無を判断できる

労災事故にあった場合には、労災保険からの給付だけでは不十分ですので、会社や元請に対する損害賠償請求を検討する必要があります。そのためには、安全配慮義務違反や使用者責任といった法的責任の有無を判断しなければなりませんが、一般の方には難しいといえるでしょう。

弁護士に相談すれば、具体的な状況を踏まえて、会社に法的責任があるかどうかを判断してもらうことができます。

会社・元請との交渉を任せることができる

会社に法的責任があったとしても、労働者個人で会社を相手に交渉するのは大きな負担となります。このような場合には、弁護士に依頼するのがおすすめです。弁護士に依頼すれば、弁護士が労働者の代理人として会社と交渉することができますので、労働者自身の負担は大幅に軽減されます。

また、弁護士が交渉することで会社側も対応せざるを得なくなりますので、交渉段階で解決できる可能性も高くなります。

交渉が決裂し、裁判になった場合も対応できる

会社との交渉が決裂した場合には、裁判所に訴えを提起しなければなりません。裁判手続きは、非常に複雑かつ専門的な手続きですので、労働者個人だけでは対応は難しいといえます。

弁護士に依頼をすれば交渉から引き続き訴訟の対応も行ってくれますので、最後まで安心して任せることができるでしょう。

【参考】労働災害を弁護士に相談すべき3つの理由

まとめ

ひかれた・衝突された労災事故の被害に遭った場合、怪我の程度が重く、治療終了後も障害が残ってしまう可能性があります。このような怪我をしてしまった場合、労災保険からの給付だけでは十分な補償とはいえませんので、会社への損害賠償請求を検討する必要があります。

会社に対して損害賠償請求をする際には、法的責任の有無の判断、証拠収集、交渉・裁判など弁護士のアドバイスやサポートが必要になります。会社への損害賠償請求をお考えの方は、弁護士法人山本総合法律事務所までご相談ください。

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